20190719.今一度環境を考えて
「環境を守る」ということはどういうことか.尾崎周二他.岩浪書店
・環境とは何か?
社会環境と自然環境に依存する人間。社会環境の反応が自然環境を破壊、社会環境をもシステムダウンさせる。
環境問題を捉えるには自然だけでなく人間社会の問題も複雑に絡み合うことを理解し、多元的アプローチを試みる。
全ての生き物に、それぞれの環境がある。
ある生物がもたらした影響が生態系を破壊するとして、その後その影響物資が新たな生物誕生のキーファクターになるのであれば、環境を破壊したとは誰の視点でも同じことが言えるのだろうか。
・内在的価値観
そのモノコトがもたらす影響や関係とは直接関わりはないが、モノコト自体に価値を見出せること。蒐集は行うことに価値を見出す。自然は守られるべき、崇めるべきという思想も内在的価値観。
環境保全のために人間がどうあるべきかを問い続けること。
社会システム、近代的発展からの脱却が新しい自然に対する価値観を生む。
・自然の価値
自然の価値について分類すると普遍的価値(守られるべき、内在的な価値観)と多元的価値(人間社会形成において必要な資源利用など)に分かれる。
ただ守るべき存在として自然を理解するだけでは浅い。既に多元的価値の中、自然が我々の生活を担保していることを踏まえること。両方の価値観をもつ。倫理観と道徳観の共生。自然保護的価値観と人間環境担保機能の理解。バランスが大事。
・環境を思想する
環境思想はどこでもだれでもできる。日常に環境が潜む。カブトムシは採集から購入へとなったことも日常に潜む環境思想の手がかり。
・自然の社会化
自然の利用、つまり労働になる自然は社会へ取り込まれた。
文化でも社会性に従って自然の価値も変わる。←多元的価値観が生まれた?
牛はある地域では聖。ある地域では家畜産業。
人間も自然と捉えれば、社会化(近代)するとこで都市に飲み込まれた自然といえる。
より良い自然の社会化として、里山が挙げられる。里山は奥山、里山、里とグラデーションする社会性と自然の密度が関係しあうことで循環する。
薪を作るために里山をつくり、里山は奥山との境をつくり伐採による栄養を供給するシステムなど。
つまり労働が近代化したことで、自然の社会化が変貌をとげ、自然循環が破壊されたといえる。
・新しい循環
先述したとおり、自然環境に対し、我々の社会性の変化を必要とすることが保全につながる。循環システムも里山の社会へ戻ることが理想ではない。既に新しい社会に馴染んだ我々が回帰することは難しいからである。
そこで新たな循環を構築する必要がある。
筆者はここで「商品化」をやめることを提言している。人間も奴隷制度をやめ、社会における一つの経営システムを変化させ倫理観と道徳観を変化させた。
同じく自然も商品化しないこと。買わない売らない。恩恵として共有する視点が必要と述べた。
/クラウスエーダー[自然の社会化」法政大学
・持続可能な発展
今を生きるものの公平的な発展と将来への発展を見越す。
見えないもの、ことを想う目を鍛える。
感想
ランドスケープを学ぶ中で自然と人の共生の重要性を理解していたが。社会環境という新しいワードを受け、人間の環境、今の社会システムをどう変化させるか。ランドスケープで言うところの参画手法やコミュニティデザインといった分野の必要性を改めて認識した。
同じく環境を捉える上で「生物多様性」「生態系保全」という大きくも全ての倫理にかなうか疑わしい説論を学べまたことが非常に良い体験となった。
私たちの身近な生活に潜む違和感を紐解くことで自然環境を含めた共生の道を歩いていきたい。